砲撃を生き延びたベートーベンは平凡な日常を取り戻したかっただろう《ベートーベン:弦楽四重奏曲第10番変ホ長調Op.74》

想像して見て下さい:望んでもない戦争が自分の街まで来てしまって、終わるま辛抱する、待つしかない。そんなとき、どんな音楽を作りたくなる?怒りをぶつかるもの?悲しみを訴えるもの?いろいろあるだろうけど、あの激しいベートーベンは以外に「終わった?普通の生活に戻っていい?」と問いかけるような、日常生活の平和を取り戻したいような曲を書いた:

《ベートーベン:弦楽四重奏曲第10番変ホ長調Op.74》

1809年、ウィーン。5月にナポレオンが砲撃しはじめたときベートーベンは弟のカスパールの家の地下室に避難した。既に聴覚を失いはじめたし、さらに耳を痛めないように、
ベートーベンは枕を耳に当ててずっと待っていた。

そんな経験を生き延びたベートーベンが書いた弦楽四重奏曲は普段の作品よりはずっと平和な風景を描いたと私は思う。

冒頭のメロディーが質問のようなフレーズの連続。「終わった?」と聴くような。はっきり始まるメロディーではなく、勇気を絞りながら、一歩ずつ外の様子を見に行くような。でも怖くないのよ。自分を安心させたいような音楽に聞こえる。希望も感じる。結局1楽章のメインテーマがとっても明るくて美しい。愛する街に元気を与えたいような気持ちだったのでしょうか。もちろんベートーベンらしく突然びっくりさせるような大きい音もあるけど、ケロッとまた明るいメロデイーが流れ出す。そしてこの1楽章の終わり方が素晴らしくて「ハープ」名前の由来となる。10分程度です。是非聞いてみてください。



続き、2楽章がとっても穏やか。3楽章は普段だと軽くて元気な部分だけど、この曲では一番激しい部分となる。そしてフィナーレの4楽章が明るく元気で活発に終わると思ったら、そうではなく。とってもシンプルなメロディーにバリエーションを付け足す形。

私にとってベートーベンは、人間のあらゆる感情の全てを生のまま音楽で表現できる天才。だから戦争を経験したベートーベンがこんな穏やかな音楽を書くところにびっくりした。普段の生活のありがたみを感じたのでしょうか。平凡な毎日が取り戻せるように働きかけたのでしょうか。

「ベーレンライター」
スコアのイントロより引用:
「One might expect that, when he recovered in August, his next substantial composition would be an angry and defiant response to the French. Instead, it was one of his gentlest and most intimate - the String Quartet in E flat, Op. 74. He seems to have felt that the best response to such agitation was to write a placid, relatively conventional work to aid a return to normality.」- Barry Cooper (University of Manchester)

戦争は人を変える。普段の毎日も美しいもの。そんな普段のありがたみを感じたいときに聴きたい曲かもしれない。

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大塚幸穂 第8回 サロンコンサート in 館山(千葉県)
〜チェロとピアノの名曲で、心やすらぐひと時を!〜

 開催日:2017年9月24日(日)
  時間:第1部(昼の部)13:30開場 14:00開演
     第2部(夜の部)18:00開場 18:30開演
  会場:
蜂の駅ひふみ養蜂園2階ホール
  料金:2,500円(ハーブティーとはちみつのお菓子付)
  曲目:サンサーンス/白鳥
     フォーレ/シシリエンヌ
     マスネ/タイスの瞑想曲
     ショパン/序奏と華麗なるポロネーズ
     ダグラス/この素晴らしき世界
     マンシーニ/ムーンリバー
     美空ひばり/川の流れのように
     モノ/愛の讃歌 他
     *曲目は変更になることがあります。
 ご予約・お問い合わせ:090-1910-0368(佐々木)
 FBイベントページ:
https://www.facebook.com/events/511903475817255/

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