野外で弦楽器:演奏者が説明する問題点と対策

Yagai
自然界に沢山のインスピレーションを頂いているので、外でも演奏出来たら地球と一体になって気持ちいいだろうなぁ〜とよく思う。でも、お客様がいらっしゃる企画の一部として野外演奏することとなると、気持ちがガラッと変わる。そよ風が気持ちいいと感じるときもあれば、移り変わる環境が演奏を中止とさせてしまう場合もある。今日は企画者向けに、イベントを成功させるために、そして集まったお客様に失礼のないように、演奏条件、理由、対策、そしてお願いごとをまとめてみました。

野外イベントで一番大事な要素は3点:
【外気温、雨、直射日光】

【外気温】理想的な外気温は20-25
  • 理由:演奏者は楽器を弾くために体温を保つのが大事。寒すぎると、指先の感覚が鈍くなって硬くなる。左手は弦の正しいところをリズムよく押さえるのが難しくなる。右手は指が硬くなると弓を持ちづらくなって落としてしまう危険性も出る。逆に暑いと左手がベタベタしてスムーズに滑らない。汗が楽器に落ちてニスを痛める可能性も出る。
  • 対策:理想な外気温より寒いか暑い場合、舞台に野外ヒーターや扇風機を設置して頂けると助かります。演奏者は寒いときはホッカイロ、暑いときは衣装で体温を維持をして、汗を拭くためのタオルなど用意します。
  • お願いごと①:野外演奏の場合、気温によって演目を変更することがあります。ご了承下さい(寒くて指が硬くなる場合ゆっくりの曲へ変更、暑くて指が滑らない場合音域が狭い曲にしておくなど、調整させて頂きます)。
  • お願いごと②:15度以下、30度以上の場合、演奏中止とさせて下さい(寒いと楽器が割れる、暑いと楽器のニスが溶けるなど、取り返しがつかないことがあるためです)。

【雨】雨天中止の予定でなければ、屋根付き舞台は絶対条件
  • 理由:弦楽器は汚れと湿気から守るためにニスが塗ってあるけど、響を活かすために出来るだけ薄くて柔らかいものになっています。その楽器に水滴が当たってすぐに拭かなければ、ニスが溶け始めて、木が水分を吸い込んで、木が柔らかくなり、いずれは歪んで、楽器の形そのものが変わってしまいます。このため弦楽器奏者はひとまず雨の中弾き続けることは不可能だと思って下さい。屋根付き舞台だとしても雨が吹き込んで来てしまったら、演奏を止めて、雨が当たらないところへ移動して、楽器を拭いてから、また演奏を続けることになります。
  • 対策:屋根付き舞台がない場合、舞台の隣に屋根付きケース置き場を作ることが大事です(よくバーベキューや屋台で見かけるタープなど)。万が一雨が降ってきて演奏中止になる場合、楽器をしまう前に拭かなければいけない。そのため屋根付きスペースが必要です。専用スペースでなくてもいいです。例えば出演者の荷物や音響機材と同じスペースでも大丈夫です。
  • お願い事①:屋根付き舞台、又は屋根付きケース置き場がない場合、雨が降ったら演奏中止ではなく、雨が降りそうだったら演奏中止とさせて下さい。

【直射日光】外気温によるけど、極力避けたい
  • 理由:弦楽器は直射日光に当たると温まって木が柔らかくなって弦の張り具合が緩んで音程が下がる。例えば外気温が28度、直射日光に当たると2分もしないうちに表面が熱くなり、音程が変わり始める。そのまま演奏を続いてしまったら、音程が取りづらいだけではなく、ニスが溶け始めまて、触っただけでも指紋を残してしまう。
  • 対策①:屋根付き舞台がない場合、建物の影などを利用。
  • 対策②:直射日光を避けられない場合、外気温によって演奏時間を調整。例えば外気温が20度ぐらいであれば、それほど早く温まらないので30分ぐらいは演奏出来ます。
  • お願い事①:直射日光が当たって、楽器が温まっている可能性があるとき、控え室を26度以上にして下さい。楽器は急に冷えると、柔らかくなった接着剤が突然固くなって板が剥がれることがあるからです。
一番気にかけて頂きたい3点は「外気温、雨、直射日光」でした。でもまだあります!その他、自然の影響と対策に目を通して下さい:

【強風】譜面台の安定対策
  • 理由:譜面が飛んでしまうことは演奏者が想定してクリップなどいろいろ用意していきますが、譜面台そのものが楽器の方へ倒れてくることがあります。
  • 対策①:しっかりした重たい譜面台を使う。
  • 対策②:譜面台の足元に重しを乗せる(石や台風の浸水予防に使う土嚢など)。

【虫】季節と光に注意
  • 理由:季節と時間帯によって虫の動きが変わります。楽器への害は少ないですが演奏者の集中力が散ることがあります。特に夜の場合、照明に虫が集まって演奏中に身体や楽器に当たってくる事もあります。
  • 対策①:夜の場合、舞台を広くして照明を演奏者の位置から出来るだけ遠く離す。
  • 対策②:蚊取り線香を椅子の下に置いておく。

【飛び物】上から落ちるものにも注意
  • 理由:例えば木の影を利用して舞台を作る場合、木ノ実が落ちて楽器に当たることがあります。又は、毛虫がニョロニョロと降りてきて演奏者をびっくりさせることもありえます。運が悪ければ鳥の糞も
  • 対策①:屋根付き舞台
  • お願い事①:屋根付き舞台がない場合、ステージの位置を決定する前に、演奏を予定している時間帯に(出来れば予定している季節に)しばらくその場で立って自然の動きを観察して、上から舞台に物が落ちる可能性の少ない場所を選んで下さい。
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以上、野外イベントでクラシック演奏者が配慮していることでした。

野外演奏である限り多少のサプライズは付き物だと思いますが、環境に応じて対策をとっておけば、演奏者は当日お客様に喜んでもらえるように自然を楽しみながら音楽に集中してとっても素敵なイベントになります。

私が一番思い出に残っている野外ステージはクーペ&Shifoと一緒に演奏させて頂いた沖縄の
くるくまの森野外ステージ。海のそばで最高だった!次の予定は日高の高麗神社の神楽殿 9/24(月祝日)。ご都合の合う方は是非遊びに来て下さい!

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Sachi のコンサート情報

2018924日(月祝日)@ 高麗神社
第8回 鎮守の杜の音楽祭 日高市(埼玉県)
会場:高麗神社 境内 神楽殿
開演:13:3030分)
料金:無料
出演者:大塚幸穂(チェロ独奏)、他
曲目:バッハ:チェロ無伴奏組曲第1番よりプレリュード、他
アクセス:埼玉県日高市新堀833(高麗川駅より徒歩20分)
主催/お問合せ:高麗神社 tel.042-989-1403

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